危機遺産とは、危機にさらされている世界遺産リスト(危機遺産リスト)』に登録されている遺産を指します。
2023年1月にパリのUNESCO本部にて第18回世界遺産委員会臨時会合が開催されました。
そこで、新たに3件の世界遺産が緊急登録。
これにより世界遺産は2023年4月現在1157件となっています。
今回の新たに登録された3件の遺産はすべて危機遺産とよばれるものです。
危機遺産って聞いたことないんだけど、どんな遺産?
なんで臨時に会議を開いて急いで登録したの?
ニュースなどを見てこう思われる方もいると思います。
急いで登録しないと、争いや環境破壊などで世界遺産に登録したい場所が失われてしまう可能性が高いから、通常の手続きをしないで臨時の会議で登録したんです!
- 危険な状況下に置かれた既に世界遺産に登録されていて、危機遺産リストに追加したものを危機遺産という
- 『確定的な危機』、『潜在的な危機』の2種類が危機遺産リストの登録基準になっている
- 緊急的登録推薦とは、
- 暫定リストに載っている遺産で危険に直面している遺産を、緊急的に登録してしまうことを指す
- 景観が破壊されると、世界遺産登録を抹消される場合もある。
- 今まで抹消された世界遺産は3件
アラビアオリックスの保護地区、ドレスデン・エルベ渓谷、リヴァプール海商都市
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記事も書いていますので良かったら参考にしてくださいね
危機遺産ってなに?
危機遺産とは、『危機にさらされている世界遺産リスト(危機遺産リスト)』に登録されている遺産を指します。
アフガニスタン・イスラム共和国の『バーミヤン渓谷の文化的景観と古代遺跡群』が危機遺産では代表的なものです
危機にさらされている世界遺産リストの登録基準とは?
- 世界遺産リストに登録されている遺産が重大かつ明確な危険にさらされていて、その脅威が人間の関与によって改善不可能であること
- 保全のためには大規模な作業が必要であること
- 世界遺産条約に基づく援助がその遺産に対して要請されている場合
上記の場合、世界遺産委員会はその遺産を危機遺産リストに載せることができます。
守りたい大事な世界遺産が私達人間の手によって危険にさらされている場所もあるんだね
危機遺産リストへの登録基準には『確定された危機』と『潜在的な危機』の2種類があり、作業指針で定められています。
危機遺産に登録されたらどうなるの?
遺産の保有国は世界遺産委員会の協力のもと保全計画の作成と実行をしなくてはいけない。
世界遺産基金の活用、世界遺産センターや各国の政府、民間機関などから財政的・技術的援助を受けれるようになる。
危機遺産に登録された場合は遺産の保有国は上記のようになります。
危機遺産登録された遺産の保全状態について、リアクティブ・モニタリングを行い毎年審議をします。
危機遺産として登録を継続するのか?
ちゃんと保全計画は実行されているのか?などを会議で毎年調べてるんだね
お金もかかるし、色々な所から支援も受けてるから毎年チェックはしないとね
緊急的登録推薦とは?
顕著な普遍的価値があることが明らかな暫定リスト記載の遺産で、危険に直面している遺産を通常の登録手順をとらずに緊急的に登録してしまうことを指します。
日本では彦根城などが暫定リストに記載されています。
緊急的登録推薦で世界遺産に登録されると同時に危機遺産に登録されます。
顕著な普遍的価値ってなに?
国家間の境界を超越し、人類全体にとって現代及び将来世代に共通した重要性をもつような、傑出した文化的な意義及び自然的な価値を意味する。
難しいので、簡単にいうと
現代及び未来でも、どんな人がみても重要だと思う文化的または自然的な価値
のことを指します。
近年の危機遺産の動向
2021年2023年に新たに危機遺産になった遺産は4件です。
2021〜2023年 新たに危機遺産に追加された遺産
2021年 | ロシア・モンタナの鉱山景観(ルーマニア) →登録と同時に危機遺産リストに入る |
2023年 | オデーサの歴史地区(ウクライナ) トリポリのラシッド・カラミ国際見本市(レバノン) マアリブの古代サバア王国記念建造物群(イエメン) →3件とも緊急的登録推薦にて登録。同時に危機遺産リスト入りする |
危機遺産は2023年4月現在55件。
アフガニスタン、シリア、コンゴ民主共和国の世界遺産はすべて危機遺産です
危機遺産リストから脱した遺産
1997年 | プリトビツェ湖沼群国立公園(クロアチア) |
1998年 | ドゥブロブニク旧市街(クロアチア) |
2004年 | アンコールの遺跡群(カンボジア王国) |
2007年 | カトマンズ盆地(ネパール) リオ・プラターノ生物圏保護区(ホンジュラス) アボメーの王宮(ベナン) |
2021年 | サロンガ国立公園(コンゴ民主共和国) |
エヴァーグレース国立公園(アメリカ合衆国)は2007年に一回危機遺産を脱したが、2010年には水生生物の生態系の悪化などの理由でふたたび危機遺産リスト入りをしています。
このように一回危機遺産を抜けたが再度危機遺産リストに入ってしまった遺産もあります。
リオ・プラタノ生物圏保存地域(ホンジュラス)
ガランバ国立公園(コンゴ共和国)
トンブクトゥ(マリ)
エヴァーグレース国立公園(アメリカ合衆国)
上記は再度危機遺産リストに入ってしまった遺産です。
世界遺産登録が抹消されることもある?
世界遺産の顕著な普遍的価値がなくなったと判断された場合、世界遺産リストから抹消される場合もあります。
危機遺産リストに載ることなく抹消されたものもあります。
世界遺産登録が抹消されたもの
アラビアオリックスの保護地区(オマーン国)
オマーン政府が天然資源採取のため保護地区を90%削減する政策を取りました。
そのことにより、危機遺産リストに記載されることなく2007年に世界遺産リストから抹消されました。
ドレスデン・エルベ渓谷(ドイツ連邦共和国)
住民投票により生活の利便性を向上するため、エルベ川に近代的な橋を建設することが決定しました。
そのため推薦時に示された保全管理が不十分で景観破壊が起こる懸念から危機遺産に登録されました。
しかし橋の建設を開始したため2009年に世界遺産登録リストから抹消されました。
リヴァプール海商都市(英国)
再開発により現代建築が多く見られるようになり、景観悪化のため2012年に危機遺産に登録されました。
しかし、サッカースタジアム建設などによる過剰開発の懸念を理由に2021年世界遺産登録リストから抹消されてしまいました。
危機遺産とは何か?最後に
今回の3件の遺産登録は他国からの攻撃によるものや内戦、保存状況の悪化が原因で緊急的登録推薦されています。
緊急的登録推薦を最近行ったので、世界遺産検定ではその他分野に出題される可能性もあるので覚えておきたいですね。
緊急的登録推薦で登録される遺産が少しでも減る世界になるといいなと思います。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。